インド占星術について、
↓前回からの続きです。
今回は、現代に馴染みのある西洋占星術との違いについて主にまとめます。
そして例外なく長くなったので、さらにわけました。。笑
インド占星術と西洋占星術の共通点と相違点
西洋占星術の特徴の1つとして、目立った流派が存在しないことです。
しかし、東洋占術には流派が複数存在しています。
インド占星術も、パラシャラー占星術、ジャイミニ占星術、クリシュナムルティ占星術などいった異なった占術技法があります。
一般的に、インド占星術と言われてるのは、パラシャラー占星術のことを指しますので、ここでもそれをメインに違いをまとめます。
ということで、基本的には出生図(ネイタル・ラーシ)を両方の占星術で見た場合の主な違いや共通点などを主に整理していきます。
まずは共通点から。
共通点
古典の西洋占星術を汲んでる流れで、使用する概念(サインやハウスなど)は同じですが、インド占星術と西洋占星術でそれぞれ異なる意味で解釈しているという細かい差異はあります。
- サイン(12星座)の概念
- 天体の概念
- ハウスの概念
- 占術の用途の種類
(インド占星術にも、マンデーンやホラリー、エレクショナルなどがある)
使用する星座帯方式の違い
まず一番大きいところでいうとここです。
サインの概念は同じくありますが、そのサインの位置を決める星座帯のシステム(サインを区切る基準の方式)に違いがあります。
星座帯とは、つまりホロスコープの円周になる、黄道12星座のことですね。
- 西洋占星術 →トロピカル方式
- インド占星術 →サイデリアル方式
このブログは西洋占星術の記事も扱ってるので、ちょっとここはもう少し詳しく説明を入れておきます。
トロピカル方式とサイデリアル方式
↓ここで説明してるサインの区切り方がトロピカル方式です。
つまり、毎年の春分点を牡羊座の起点(0度)とし、そこから30度ずつサインを区切っていくのをトロピカル方式による星座帯と言います。
でも、西洋占星術で「牡羊座(牡羊宮)」と定めている範囲は、実際の恒星である「牡羊座」にはありません。
その理由は、公転面の垂線に対して地球の地軸が傾いているため、地球の自転による歳差運動*1によって、12星座は毎年少しずつ東から西へずれ、実際の恒星である12星座と12星宮は位置がずれてしまっているのです。
そのため、西洋占星術では、「12星座」を恒星で出来た星座のことではなく、あくまで春分点より12区分した、指標としての12星宮(サイン)として扱っています。
一方、サイデリアル方式は、実際の恒星を元に、12サインを区切っています。
トロピカル方式では、実際の星座の名称と天空の星座の位置はずれてますが、恒星の星を基準としてるので、サイデリアル方式では常に一致します。
実際、トロピカル星座帯とサイデリアル星座帯の差異は、現在、約24度くらいと言われています。
この差異のことを、インド占星術では、アヤナムシャ(Ayanamsa)と呼んでいます。
つまり、現在の牡羊宮と呼ばれている位置のバックの宇宙には、魚座の星々が輝いているということですね。
そうなると一見、「えっじゃあサイデリアル方式の方が正確なんじゃ…」と思われるかもしれないんですが、これは考え方の違いです。
確かに、かつては、トロピカルもサイデリアルも差異はありませんでした。
差異が出たなら、かつてあったところに基準を定めようとするのは一見合理的です。
だけれど、背後にある恒星も止まっているものではなく、動いているものなので、どの星を基準にすればいいのか不明確であるという問題があります。
専門家の間で基準点が異なっているため、そうなるとホロスコープ自体変わってしまい、時期読みも全てずれてしまいます。
故に、インド占星術では、この差、つまりアヤナムシャ(Ayanamsa)の精度が大事になってきます。
この精度が、インド占星術においての精度といっても過言ではないです。
対して、トロピカル方式は常に春分点から基準を決めているので、そういったことは起こりません。
かつて、「春」とされてきたものが、時代に合わせて移ってきたなら、その「春」という季節に合わせて、12星座を区切っているからです。
春生まれ、夏生まれ、秋生まれ、冬生まれという季節感覚を大事にした方式と言えます。
つまり、サインとは季節の移り変わりなのです。
そういう意味ではトロピカル方式も合理的に思えますね。
西洋占星術では、こうした時代にあわせていける柔軟さを持ちます。
動かせる部分の「運命」に重きを置く、という観点ではトロピカル方式が合ってると思うし、
対してインド占星術は、その人の「魂」をみるということがベースにあるので、自分の生まれてきた本来の「宿命」を知るための、魂の出発点を知るという点において、サイデリアル方式を有効としているのではないか思います。
ここに、インド占星術と西洋占星術の考え方の根本的な違いが見て取れます。
どちらが良い、悪いではなく、価値観や考え方の違いですね。
この点は、違いのまとめの一番最後にまた触れたいと思います。
使う天体の違い
古典の西洋占星術や、インド占星術では、土星以遠の天体(トランスサタニアン)=海王星・天王星・冥王星はまだ発見されていなかったため、
太陽・月・水星・火星・金星・木星・土星の基本7天体で見てきます。
- 西洋占星術(現代) →10天体+α*2
- インド占星術 →7天体+2虚星(ラーフ・ケートゥ)
ラーフ・ケートゥというのは、西洋占星術でいうところの、ノード*3(ドラゴンヘッドとドラゴンテイル)のことです。
インド占星術では、ドラゴンヘッド*4をラーフ、ドラゴンテイル*5をケートゥと呼び、虚星として扱っています。
また、凶星とされる星も違います。
西洋占星術では、凶星といえば、基本的に、火星・土星+トランスサタニアン(海王星・天王星・冥王星)が上げられますが、現代の西洋占星術では、あまり「凶」と決めつけていません。
凶というのは、作用が極端だったり強いというだけであり、「凶」か「吉」となるかは人による、
という心理的な観点を生かした、非常に現代らしい西洋占星術の考え方が主流となってきていますが、(古典の西洋占星術は別)
一方、インド占星術での凶星は、「凶」とはっきり決まってます。笑
火星・土星・太陽・ラーフ・ケートゥです。
金星と木星を吉星とするのは同じです。
月と水星は、場所によって吉凶が変わるため中性と(月は弱い吉星とも)されています。
また、西洋占星術とインド占星術では、天体それぞれに与えられる意味が若干違います。
例えば、女性にとっての夫は、西洋占星術では「太陽」をみますが、インド占星術では、夫を意味する星は「木星」になります。
他にもありますが、こうした細かい違いがあったりします。
重要視する星の違い
- 西洋占星術 →太陽
- インド占星術 →月
先程の凶星の扱いの違いで、太陽がありましたが、西洋占星術に太陽が凶作用というのはあまり聞きません。
しかし、インド占星術では、太陽は凶星に位置づけられています。
なぜなら、太陽は、インド占星術では「エゴ」とされているからです。これは根底にあるインドの思想と関わってる感じがします。。
以前の記事でも触れましたが、インド占星術は、宿曜とも関わりが深く、月をとても重要視します。
そのため、月ラグナといって、月でもアセンダントをとることができます。
西洋占星術では、太陽は目的意識として重視したり、性格分類としても使われますが、インド占星術では性格は、太陽は使用せず月でみます。
さきほどの、サインを区切る基準の方式の違い(トロピカル方式とサイデリアル方式)の話にもありましたが、西洋占星術は、季節感覚を大事にする占星術で、春分点を基準とするトロピカル方式を採用します。季節って、つまりは太陽の動きのことなんですね。
そういう意味でも、西洋占星術にとって太陽を重視する意味がみてとれます。
なので、この違いは結構大きい気がします。
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ざっとこんな感じですが、あとは、これらをふまえたホロスコープの違いなどを次回書いて終わります。。!笑
*1:こまなど回転するものの回転軸がゆっくりと方向を変えていく運動のことで、地球の赤道面が黄道面に対して約23.4度傾いているのと、地球の赤道部が膨れていること、また、月・太陽から自転軸を立てようとする偶力を受けるため、地球の自転軸は、黄道面に垂直な線のまわりを、周期約2万5800年で首振り運動が起こる。
*2:西洋占星術には、実在する星以外にも、小惑星や、計算によって導き出されたポイントがたくさんあり、どれを用いるかは占星術師によって違う。
*3:実在の惑星ではなく、計算によって導き出される、月の軌道(白道)と太陽の軌道(黄道)の交点のこと。この地点の近くで新月・満月が起こるときは、日食・月食になる。ヨーロッパでは、日食・月食が起こるポイントを空飛ぶ竜が太陽と月を食らう姿をイメージしたことから、星が姿を消す2つのポイントを竜の頭(ヘッド)と尾(テイル)になぞらえて、ドラゴンヘッド・ドラゴンテイル(一般に昇交点・降交点)とも呼ばれる。これら2つの点は正反対に位置し、約19年で1周する。
*4:黄道に対して月が北上するポイント(昇交点)
*5:黄道に対して月が南下するポイント(降交点)